気を感じる
鍼灸の治療をしていると気と言うものを実感として感じる事が度々あります。
脈(みゃく)を診てその症状に必要なツボに鍼をすると鍼が吸い込まれるように体に入っていく事があります。
まるで乾いた大地に水が染み渡るように。
そんな時は、鍼をゆっくりと揺らしたり、動かしたりしてそこに気を集め、そして送り出してあげます。(意識でそのようにイメージして鍼を動かします。)
そうすると治療を受けている方のお腹が鳴り出したり、手足が暖かくなって来たりします。
更に私のお腹までもがグーグーと恥ずかしいぐらいに鳴り出したりします。
足や手にある1,2箇所のツボからその方のからだ全体が動き出し、そして更に同じ空間に居る私の体までが動き出したりします。
残念ながらこれは、私の鍼の腕が良いとか、サイキック能力があるのとかではなく、ただツボを鍼で刺激したら気が動いただけの事なのです。
多分日常でもあちらこちらで普通に起こっているごく単純な気の動きなのでしょう。
でも今の私たちは、あまりにも目に見える物や、しっかりと数値で現れている物に囚われ過ぎていて本来感じていた気の動きを見過ごしてしまっている傾向にあるように思います。
私もたまたま鍼やツボを使う事で気と言うエネルギーに気付かされる事があるだけで、やはりいつもは物事を固定概念で眺めています。
だからこそ治療の時は、その方の病歴や体質、年齢など全てのデーターを一旦横に置いて、今この時に体が何を表しているかを脈や舌、皮膚やツボの状態、目の輝き等で丁寧に探ってみます。
その際に特に手がかりをくれるのがその方の発しているエネルギーの感です。
‘エネルギーの感じ’なんてあまりにも抽象的で非科学的ですが、これが意外と大きなヒントをくれます。
訴えられている症状が強くてもこの体が表現しているものや、エネルギーの感じが落ちついていれば全体を調整する事で実際に症状が治まる事が多いのです。
ですが逆にこれといって大きな不調を感じていないのに、これらが乱れている時はとても注意が必要です。
この‘エネルギーの感じ’は誰でも普段感じています。
例えばお子さんや、看病している時の家族の体調や様子に「何だかいつもと違う違和感」や「多分今回は大丈夫だろう」と言った感覚を感じられた事があると思ます。
それが私の言う‘エネルギーの感です。
実は私たちは日々目に見えないエネルギーを感知してそれを使って生きています。
だからそれをもっと意識して見つめていく事で更にそれを鋭敏に感じる事が出来るはずだと思います。
元々持っていた能力なので、それを静かに感じる事で少しずつでも感じる力を取り戻していければ日常の中でも色々と流れがスムーズに行くのではないでしょうか。